体外受精における双子の危険性

体外受精では、妊娠の効率をよくするため、2つ以上の受精卵を子宮に戻すことがよく行われます。つまり、人工的な双子、三つ子、四つ子、五つ子というわけです。
胎児は、普通、1人につき1つの胎盤を持ち、お母さんの血液から栄養をもらい、お母さんの血管を通して(お母さんの腎臓や肝臓を通して)老廃物を捨てています。
ところが、1つの胎盤を2人の胎児が共有することがあります。これは、いままでは一卵性の双子に起こるとされてきました。
1つの受精卵が2つに分かれてそれぞれが育っていったのが、一卵性の双子です。
遺伝子も同じなので、外見上とてもよく似ている双子で、もちろん、一方が女の子なら、もう1人も女の子です。

一つの胎盤を共有する危険性

ところが最近、遺伝子の違う二卵性の双子が1つの胎盤を共有する場合があることが、わかってきました。自然にも起こりうることですが、体外受精で複数の受精卵を子宮にもどすことで、より頻繁に起こってきます。
なぜ胎盤を2人で共有(一絨毛膜性双胎)していけないかというと、さまざまな困難が起こってくるからです。
まず、2人のうち1人が、特に妊娠中期、後期※1に死ぬ危険が高まります。
一般に、双子では、妊娠前期に1人が死ぬ確率は50%と多いのですが、その場合、一方の生きている胎児の予後はいいのです。ところが、妊娠中期、後期に片方の子が死ぬと、胎盤を2人で共有する場合には、生きているもう1人の赤ちゃんも神経学的障害を受けやすくなるのです。さらに、早産の危険も高まります。
また胎盤を2人で共有すると、2人の血管がつながってしまい、双子の1人の胎児の血液が、もう1人の胎児の体内に流れ込む(輸血)現象が起こる場合もあります。
双胎間輸血症候群といって、予後は悪く、双子の片方が、胎児期や新生時期に死亡する率は、とても高くなります。
今の話は、一卵性双生児の場合ですが、体外受精で生まれた子どもの中に、男女の二卵性にもかかわらず、1つの胎盤を共有したと考えられる例が見つかっています。
2人の遺伝子の、由来の違う血液をもつキメラ※2(部分キメラ)が数例報告され、不妊治療に携わる人々をぎょっとさせました。
牛は、体外受精で妊娠出産することが普通に行われていて、雄と雌の交じり合った遺伝子を持つキメラが報告されています。
生まれた雌は、フリーマーチンといって、子どもが産めない不妊牛です。
ヒトの場合、幸いなことに、血液だけのキメラですが、男児なのに、外見上は女性の例が報告されており、キメラとの関係はまだ不明ですが、この子たちの健康について、将来にわたる追跡調査が必要となっています。

※1) 産婦人科では、全妊娠期間(40週)を3つに分けて、妊娠3半期前期、中期、後期といいます。省略して妊娠前期、中期、後期ということもあります。
※2) キメラ:生物学で、異なる遺伝子型の細胞が共存している状態の一個体。