生活習慣

サプリメントより食べ物を!

サプリメントの流行

健康でいるために食事が大切であることを話していると、〈食べ物から栄養を十分に摂るのは不可能だから、サプリが必要ですよね?〉と言われる方がいます。実際皆さんもそんな趣旨のキャッチコピーを見たことがあるでしょう。

サプリメントはどこでも食品のように手に入ります。最近の流行りは抗酸化物質です。抗酸化作用をもつサプリメントとして古くから知られているのはビタミン剤です。抗酸化作用は、ベータカロチン、ビタミンE、ビタミンCなどが知られています。大豆に含まれるイソフラボンが良いというので、最近は大豆から抽出したイソフラボンが売り出されコンビニやドラッグストアに並んでいます。魚の油に含まれるEPA、DHCが良いとわかると、魚の油から抽出したEPA、DHCのサプリメントも大流行りになります。こういう風潮にわたしはかねてから疑問を抱いていました。

ビタミン剤は野菜や果物の代わりになりうるか?大豆がいいといってイソフラボンの製剤が大豆の代わりになりうるのか?ということです。宣伝をまともに受け取ると、野菜、果物、大豆、魚から健康に良いものを抜き取って作られているので、元のものが持っている効き目をはるかに超える素晴らしい効き目があると思い込まされがちです。

サプリメントに対する疑問のいくつか

疑問の一つはサプリメントにすると、とり過ぎにならないかということです。野菜や果物、納豆や黄な粉、豆の煮物や魚をどんなに食べても食べる量は限られています。

次の疑問は、食品の中では、他の物質とお互いに作用をし合いながら存在するのに、単一またはいくつかの物質のみから出来ているサプリメントでは、良い作用も強いかわりに、害作用も強いのではないかということです。

もう一つは、サプリメントを作るとき、いろいろな化学物質を加えたり、圧力を加える、熱を加えるなどの操作が加わるということです。特に製造過程で加えられる化学物質については、製品に何の記載もされません。しかし、製品に微量に残ることも十分考えられます。こんなものを長期に飲んで大丈夫なのかということです。

抗酸化物質は食べ物から!サプリメントからではなく!

これは、アメリカ心臓協会(AHA)が、昨年、心血管疾患のリスクを減らす為に出した勧告です。イソフラボンやEPA、DHCは、サプリメントとして使われるようになって歴史が浅く、まだ、有効性に対するきちんとした研究はありません。アメリカ心臓協会は、ベータカロチン(ビタミンA前駆体)、ビタミンE、ビタミンCとE、これらのカクテルを1年から12年投与したさまざまな調査を調べて、これらのサプリメントが心血管疾患の予防に役立つとは言えないとしました。おすすめは、果物や野菜をたくさん摂り、精製しない穀物や豆類、魚、鶏肉や脂肪の少ない肉を食べる事だと言います。

イソフラボンについては、最近、男性の乳がんとの関係が疑われるという報告があります。また、胎児期や授乳期の摂取が男性生殖器に影響を与えるのではないかと懸念されています。

コエンザイムQ10について

コエンザイムQ10という名前を聞いたことがありますか?ちょっと前の栄養やビタミンの本にはほとんど扱われていません。
コエンザイムQ10は、補酵素といって身体の活動を助ける成分です。わたしたちの身体を作っている細胞のミトコンドリアというエネルギーを作り出す器官にあって、エネルギーを作るのに欠かせない物質です。

コエンザイムQ10は、今やサプリメントとして大流行りです。化粧品に添加されているものもあります。売り切れも続出とかで、メーカーも強気です。私の診療所に来られる方の中にも飲み始めている、考慮中という人がいます。インターネットで調べると、メーカーがどんなにいいかとアピールする記事ばかりが目に付きます。
コエンザイムQ10は食品として認められたとして、どんな材料から作られたか記載してあるものもほとんどないのです。唯一あったのはナス科の植物から合成されたという記載でした。他に、牛から作ったものではないという記載もありました。コエンザイムQ10は、レバーやモツ、牛肉やカツオに多く含まれます。ここでは、ハーバード大医学部で出している、消費者健康情報により、コエンザイムQ10について行われているコメントを紹介し、また、アメリカ心臓病協会の評価、久留米大の研究についてお話します。

ハーバード大消費者健康情報きちんと確かめられた効果はほとんどない

コエンザイムQ10はいろいろな病気や身体の条件の治療や処置に使うことをすすめられてきました。いくつかの研究はうっ血性心不全、心臓発作後、高血圧、糖尿病やアルツハイマーにともなう心臓の合併症に使う事を支持しています。しかし、これらも、どれぐらいの量が有効かあるいは安全かについて確立されてはいないのです。その他については科学的な根拠はありません。

副作用

血栓を作りやすい。または逆に人によっては出血の可能性があります。インフルエンザ様の症状、腹痛、頭痛を起こす可能性があります。

妊婦、授乳婦は避けるべき

胎児、乳児に対する科学的な情報がない為です。

他の薬と一緒に飲む ときの注意点

理論的に血栓を増やす可能性があるので抗血栓剤を服用している人は主治医に相談してください。理論的に降圧剤と一緒だと血圧を下げすぎる可能性があります。

アメリカ心臓病協会のガイドラインでは有益性を否定

アメリカ心臓病協会は心筋梗塞やそれによる死亡を防ぎ、症状を減らす為のガイドラインをだしています。それによると、コエンザイムQ10は有用あるいは有効でない。ある場合には害があるというクラスⅢに分類されています。このクラスⅢには他にホルモン補充療法を冠血管障害のリスクを少なくする為に開始する。ビタミンCやEのサプリメントを使うことなどが挙げられています。

久留米大学松岡氏らの警告

松岡氏らは血管内皮障害や頚動脈硬化は内因性コエンザイムQ10が増えるにつれ高まるという研究結果を発表しました。そして、動脈硬化がすすむにつれ、コエンザイムQ10がむしろ過剰になる可能性があり、コエンザイムQ10などの抗酸化サプリメントの安易な使用は危険である可能性があると指摘しています。

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